日本バイオロジカルズ株式会社
 
オーストラリアにおけるサルモネラ生ワクチン

「オーストラリアにおけるサルモネラ生ワクチンの使用・制度および野外実験等の成績報告」
王立メルボルン工科大学ピーターコール教授 (Dr.Peter Coloe)
1999.11.04 NBI国際シンポジウムにて





これから説明する試験はワクチンの有効性について、ワクチン接種群と非接種群を直接比較したものです。この試験ではワクチンの投与方法をかえてそれにより生産成績がどのようになるかで有効性を評価しました。


鶏での試験
・ワクチン接種群と非接種群での比較
・ワクチンの投与方法
・接種後のワクチンのモニター
・生産性の記録



最初の試験では初生時に飲水でワクチンを投与し、投与後にどれだけワクチン株が分離されるかを観察しました。ワクチン接種直後は、ワクチン株はかなり高率に分離されていますが、それが28日目にはほとんど分離されていません。これは約1万羽の鶏を使って行った試験ですが、これから分かるように、ワクチン株は投与直後、鶏によく定着し分離できますが、その後急速にいなくなってしまうという株の特徴を良くあらわしています。ワクチン株は投与してから7~10日目までは排菌されますが、その後急速に排菌数が少なくなっていきます。

ワクチン接種後のワクチン株の分離結果
日齢 検体 検体数 結果
鶏舎1
ワクチン群
鶏舎2
対照群
1 肝臓 20 0/10 0/10
2 肝臓 20 3/10 0/10
  糞便 30 29/29 試験せず
3 肝臓 20 0/10 0/10
4 肝臓 20 1/10 0/10
5 肝臓 20 0/10 0/10
6 肝臓 20 0/10 0/10
7 肝臓 20 0/10 0/10
  糞便 30 7/30 試験せず
28 糞便 60 0/30 0/30



ワクチン株はワクチン接種後7から
10日後で鶏から排出されなくなり、
環境中にも残存しない。


この試験は実験鶏で行ったものですが、ワクチン株を高用量接種した場合の増体に対する影響を見たものです。かなり高用量を投与したにもかかわらず、増体にはまったく影響が見られないどころか、ワクチン接種群の増体重が対照群よりも有意に良かったという結果になりました。


STM経口接種鶏の体重の増加
     1日     11日     22日 
対照 43.0 86.4 190.5
接種群 41.5 91.4 204.5


下の表は1鶏舎1万羽の鶏舎を2棟使用し、1棟をワクチン接種群、もう1棟を対照として、両群の増体と斃死率を見たものです。左側がワクチン接種群、右が無接種群です。ワクチン接種群で増体は良く、斃死率が低くワクチンの有効性が認められています。通常サルモネラの野外感染があったときに増体や斃死率に悪影響が起こると考えられますが、この例ではサルモネラの野外感染は認められませんでした。ここから言えるのはSTM1というワクチン接種が増体などに何らかの良い影響を与えられるのではないかということが考えられます。

STMを初生時に飲水投与したブロイラー鶏の
体重と斃死率
鶏舎1 鶏舎2
ワクチン接種群 対照群
日齢 体重 斃死率 体重 斃死率
    g % g %
0 43      43     
7 135 1.57 128 2.47
14 352 2.10 348 4.58
21 655 2.42 660 5.00
28 1041 2.89 1067 5.44
35 1411 3.50 1420 5.93
42 1792 4.03 1697 6.11



まとめると、STM1株は初生での腸管への定着がよい株です。しかしSTM1株は鶏の体内では最大でも2週間ほどしか存在しません。この株は鶏をサルモネラの感染から防御します。


このワクチン株のもう一つの特徴は、発育鶏卵の漿尿膜上に接種すると増殖するということです。発育鶏卵にかなりの菌数を接種しても、卵黄内に接種しない限り雛に悪い影響を与えるということはまったくありません。

このワクチンの接種方法には、皮下接種、発育鶏卵接種、飲水投与もしくは卵に直接スプレー接種することができます。どの方法でも同じ様に有効であるということが認められています。


ワクチン接種方法


 ・発育鶏卵内
 ・飲水
 ・卵殻への噴霧



このワクチンとその他のワクチンとの関連について説明する前に、抗生物質の影響について簡単に説明します。オーストラリアでは抗生物質を治療目的以外に使用することは禁じられていますので、抗生物質とワクチン株の関係は、特にオーストラリアでは問題になりません。どの投与経路でも抗生物質の影響を考慮せずに使用することができます。このワクチン株のひとつの長所は特定の栄養素を利用できないように遺伝子を削除していますので、細胞内で増殖することはできません。ですから、このワクチンは免疫抑制が起こっている場合でも安全に使用することができます。鶏の場合では、免疫抑制を起こすガンボロ病やマレック病に感染していても安全に使うことができます。


ST生ワクチンを使うことのもうひとつの利点は、ST以外の株との交差免疫が期待できるということです。また、このワクチンを使うことにより、鶏群のSE抗体検査に影響を与えないという利点もあります。このワクチンは当然STに対して防御しますし、SEに対しても防御します。また、サルモネラ ムンチョン、ハイデルベルグ、ソフィアに対しても防御するということも確認されています。この株の安全性試験の一つとして病原性復帰否定試験がありますが、この菌株では鶏から鶏へ直接継代することができていません。ですからワクチン株を鶏に接種して、それから分離して、分離したものをまた鶏に接種するという方法をとっています。鶏から鶏へ直接継代しているわけではありませんが、病原性が復帰しないということは確認しています。


これはマレックワクチンと、STM1ワクチンを同時に接種した場合、あまり期待していなかった効果ですが、マレックワクチンの効果を有意に増強するという極めて興味的な結果が得られました。対照群では、強毒マレック株の攻撃によってほぼ100%雛は斃死しています。STM1ワクチンとをHVTワクチンを一緒に打った場合は、攻撃に対してHVT単独接種群よりかなりよい防御効果が得られています。赤が試験に使用した鶏の数で、紫が試験終了時の生存数です。



また、F嚢体重比を比較した試験では、一番F嚢体重比がよかったのは、サルモネラSTM1ワクチンとHVTを接種した群であることが分かっています。


オスとメスを分けて調べた試験によれば、F嚢体重比はやはり、HVTとサルモネラワクチンを同時に接種した群が一番よかったです。


最後に、遺伝子操作により芳香属ビタミンを利用できる遺伝子を削除したST株をワクチンとして利用することの利点は、人に対しても非常に安全で有効性が高いということがねずみチフス菌で確かめられているからです。


aroA serC欠損サルモネラ菌の
安全性は?

Aromaticビタミンの欠損はヒトでは
非常に安全であることが確かめ
られている。