日本バイオロジカルズ株式会社
 
第5回NBI対談

NBI対談 第5回
  with 河岡義裕 Yoshihiro Kawaoka

かわおかよしひろ

東京大学医科学研究所
感染・免疫部門 
ウイルス感染研究分野教授                  


河岡義裕氏 プロフィール

昭和53年 北海道大学獣医学部卒業、獣医師免許取得
昭和55年 同大学院修士課程修了
鳥取大学農学部獣医微生物学講座助手
昭和58年 獣医学博士(北海道大学)取得
St. Jude Children's Research Hospital, Tennessee, Postdoctoral fellow.
昭和60年 同 Assistant Member (助教授研究員)
平成元年 同 Associate Member (準教授研究員)
平成8年 同 Member (教授研究員)
平成9年 ウイスコンシン大学獣医学部教授
平成11年 東京大学医科学研究所 細菌感染研究部教授
平成12年 東京大学医科学研究所 感染・免疫部門
ウイルス感染研究分野教授
現在に至る

学位 昭和58年 獣医学博士(北海道大学)

受賞暦 1991年、日本獣医学会賞

所属学会 日本ウイルス学会、日本獣医学会、米国ウイルス学会、
米国獣医学会

専門分野 ウイルス学

Journal Editorial Board

1996 - 現在 Journal of Virology
1997 - 現在 Virus Research
2001 - 現在 Virology
1999 - 2001 American Journal of Veterinary Research
1999 - 現在  "インフルエンザ"

公職、その他

1992 Special Review Committee, NIH (Grant reviewer)
1994-1998 Virology Study Section Member, NIH (Grant reviewer)
2000-現在 国際ウイルス分類委員会オルソミクソ属委員長




所:
日本バイオロジカルズ(NBI)は、ニワトリのワクチンを開発し販売する会社ですが、その本業以外に、養鶏業界に身をおく一員として、3つのテーマを中心に研究開発等を支援しています。1つは、"国際競争に於ける国産化の意義"です。日本でタマゴそして鶏肉をつくる必要性そのものの意義を問うことによって、日本の養鶏産業が今しなくてはならないことをみつけることです。2つ目は、"人畜共通感染症の対策"です。特にトリからヒトへの病気に対する対策を中心として正しい知識の啓蒙や研究開発の推進です。3つ目として、"タマゴと鶏肉の消費促進と付加価値の増大"です。この分野では、タマゴの価値創造に関する研究そしてコレステロールとタマゴとの関係の研究支援を行っています。
本日は、"人畜共通感染症"の分野に於いて、潜在的には、サルモネラを中心とする食中毒よりもっと脅威といわれる、Avian Influenzaを含むウィルス感染分野の世界の第一人者であられます、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授を訪問して、AIに関するお話を伺うことになりました。

先生、今日はお忙しい中、しかも昨日アメリカから戻られたばかりと伺っておりますが、貴重なお時間をいただきまして有難うございます。
今日お話しいただきたいことは、鳥インフルエンザのことです。特に今年の6月にホンコンで97年12月以来の発生がありましたので、その背景と影響などについて先生のご意見を伺えればと期待しています。


河岡:
ご存知かと思いますが、鳥インフルエンザは、中国をはじめとする様々な国の野性水禽類に常在しています。これが飼育されている水禽に移り、さらに飼育家禽に移り、ヒトに移るという構図です。鳥インフルエンザは、様々な国で常在しているとみていいと思います。

所: 野性水禽から飼育家禽、そしてヒトへの感染源は何ですか?

河岡:
それは、主に糞便です。ですから、日本のように鶏舎に野鳥が自由に出入りしにくい構造の飼育形態となっているところでは、感染が成立しにくい訳です。日本では、感染する可能性は低いと思います。


そうですか、安心しました。ところで、何故ホンコンであのように時々鳥インフルエンザが問題になるのですか?

河岡:
ホンコンで消費される鳥の7~8割が中国本土からの輸入です。そしてホンコンでは、生きた鳥を食料として市場で販売しています。消費者は、生きた鳥をマーケットで購入して、家庭で鳥を処理して調理します。世界でも家庭で鳥の処理を許しているの限られています。先程、申しましたように感染源は糞便が主ですが気管や腸管にもウィルスがいます。家のキッチンでの解体は、したがって、非常に危険です。ホンコンでヒトへの感染が成立する条件は、ここにあります。

所 なるほど。ということは、メードさんがアブナイということですか?

河岡: そうです。それとメードさんと一緒にいる子供です。

所:
何故、鳥インフルエンザの常在国の中国でのヒトへの発生がないのですか?

河岡:
報告がされていないだけだと考えられます。CDCのサーベランス・プログラムが他の国では徹底していますが、中国では鳥インフルエンザよりも他に対処しなければいけない問題があり、その分鳥インフルエンザに対する認識が低くなっているのかもしれません。

所: 例えば、アメリカでも83年に鳥インフルエンザの発生がありましたが、ヒトへの伝搬がなかったのは何故ですか?

河岡:
実は、ニューヨークにもlive poultry marketがあります。ここで生きた鳥を売っています。何故ヒトに伝搬しなかったかは、むづかしい問題ですが、おそらくウィルス自体の性質の違いだと思われます。

所:
良くわかりました。ところで、日本への影響ということを考えると、中国からのタマゴとか鶏肉の輸入により鳥インフルエンザが日本で発生することは考えられますか?

河岡:
その可能性は、ほとんどないと云えます。糞便のついたタマゴとか鶏肉なら別ですが。通常のタマゴとか鶏肉であれば問題ありません。ウィルス汚染の可能性のある腸管とか呼吸器系の部位の輸入はヤメた方がいいと思います。

所:
すると、日本への鳥インフルエンザの侵入ルートとして考えられるのは、中国の野性水禽が日本で飼育している鳥群の中に糞便をおとす可能性があるところということになりますか?

河岡: そうです。

所: 例えば、今すこしずつ増えてきたダチョウの放牧などはどうですか。

河岡:
それは、絶対にアブナイですヨ。既に実験的にも水禽に常在するインフルエンザウィルスがダチョウに感染を引きおこすことが証明されていますから。

所:
とすると、鳥の放牧スタイルというのは、イメージ的には消費者受けしますが、鳥インフルエンザの観点からは問題ありますネ。

河岡: 非常に危険です。

所: 先生、最後の質問ですが、タマゴと鶏肉はお好きですか?

河岡:
大好きです。私はよく朝ダシ巻きタマゴをたべます。ダシ巻きが一番すきです。

所: ありがとうございました。